ムッキーの初老日記セレクト

あの頃と今とネットレトロな日記。

古書店このはづく

古書店このはずく③

第三話 詩集 午後の光が、棚の背にやわらかく落ちていた。 カランと音がして 扉が開く。 入ってきたのは、制服姿の女の子だった。 少しだけ周りを見て、ゆっくりと棚の方へ向かう。 一冊の薄い本を手に取る。 詩集だった。 ページを開く。 <…… コノハズクは…

「古書店このはずく」②

第二話「雨の日」 朝から、雨が降っていた。 細く、長く続く雨だった。 通りを歩く人も、少ない。 足音も、会話も、いつもより遠くにある。 店の戸を開けてみた。外の湿った空気が少しだけ入り込んできた。 むつきは、何も言わずにそれを受け入れた。 <…… …

「古書店このはづく」①

第一話 その店は、海に近い通りにあった。 潮の匂いが、ほんの少しだけ混ざる場所。人通りは多くもなく、少なくもない。 気づく人は気づくし、気づかない人はそのまま通り過ぎていく。 店の戸を開けると、紙の匂いがする。 新しいものではなく、少し時間を含…