第二話「雨の日」
朝から、雨が降っていた。
細く、長く続く雨だった。
通りを歩く人も、少ない。
足音も、会話も、
いつもより遠くにある。
店の戸を開けてみた。
外の湿った空気が少しだけ入り込んできた。
むつきは、何も言わずにそれを受け入れた。
🦉<……
その日、客は来なかった。
雨の音だけが、
店の中に静かに落ちてくる。
むつきは一冊の本を手に取った。
ページをめくる。
そのとき、指先に何かが触れた。
薄い紙だった。
本のあいだに、
挟まれていた。
取り出してみる。
何も書かれていない。
白いままの紙。
栞にしたのかしら、とひとりごちた。
けれど、少しだけあとがついている。
誰かが、そこに
何かを書こうとした形跡があった。
🦉<ズクク…
「……書かなかったんですね」
誰に向けた言葉でもない。
紙を、そっと本のあいだに戻す。
ページを閉じる。
外では、まだ雨が降っている。
本には、時間がはさまっている。
書かれなかった言葉も、
そのまま残る。
🦉<ここに、おるよ。
